中小企業診断士の役に立つ(かもしれない)お話し

政令指定都市の商工会議所で経営指導員を務める中小企業診断士×ITコーディネーターが、中小企業支援施策や経営に役立つテーマについてお話します

小規模事業者持続化補助金(補助率2/3、上限50万円)の申請時に気を付けておくべきこと

こんにちは。

 

先日は事業再構築補助金について紹介しましたが、今回は補助金つながりということで、小規模事業者持続化補助金について説明しようと思います。

 

既にご存じかと思いますが、この補助金は「販路開拓」をテーマとして、その為の経費の2/3、上限50万円まで補助されるものです。

また申請できる対象者は補助金名称のとおり、「小規模事業者」に限られます。

「小規模」かどうかは、「常時雇用する従業員」の数によります。 

商業・サービス業は5名以下

製造業・その他は20名以下

と覚えておけば大丈夫です。

「常時雇用する従業員」の定義も定められていますので、詳細は公募要領をご確認ください。

 

※ちなみに、補助金募集時には「公募要領」というものが提供されます。

これは補助金の目的や申請対象者、対象経費、申請の手続きや必要な提出書類の説明書です。

補助金申請のルールブックと言って良いと思います。

小規模事業者持続化補助金に関わらず、補助金申請を考える場合はまずは「公募要領」を確認するようにしましょう。

 

 

さて、小規模事業者持続化補助金は国の補助金ですが、複数回スケジュールや事務局が商工会議所地区と商工会地区で分かれるなど、一見難解な仕組みになっています。

 

ここからは、①補助金事務局の確認、②スケジュール、③申請手続き、④申請書作成のポイント、の順に紹介していきます。

 

補助金事務局の確認

この補助金は「商工会地区」と「商工会議所地区」で、事務局(申請書の提出先)が異なります。また、申請書の様式もそれぞれ専用のものとなっています。

これがややこしいところですが、日本全国にある多くの市町村には、

「市」には「商工会議所」

「町村」には「商工会」

が一つずつ設置されています。

まずはご自身の会社やお店(事業所)が所在する地域が、どちらの地区かをご確認ください。

 

商工会議所地区の事務局は「日本商工会議所」です。

商工会地区の事務局は各都道府県の「商工会連合会」ですが、元締めは全国商工会連合会です。

詳細情報はそれぞれ次のURLでご確認ください。

公募要領をはじめ、必要な申請書類もここからダウンロード可能です。

 

商工会議所地区の事務局

 https://r1.jizokukahojokin.info/

 

商工会地区の事務局

 https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/ 

 

 

②スケジュール

この補助金は令和元年(2019年)度の補正予算で予算組みされたもので、2019年度~2022年度にかけて、継続的に実施されます。

具体的には、おおむね4か月に1度締め切りを設けて募集・審査・交付を行います。

2019年度・2020年度は次の通り実施されました。

第1回:2020年3月31日(火)締切

第2回:2020年6月5日(金)締切

第3回:2020年10月2日(金)締切

第4回:2021年2月5日(金)締切

 

2021年度は第5回~第7回までが予定されています。

第5回:2021年6月4日(金)締切

第6回:2021年10月1日(金)締切

第7回:2022年2月4日(金)締切

 

次は第5回で、6月4日が締切ですね。

 

今年のスケジュールを踏まえると2022年度は

第8回:2022年6月上旬

第9回:2022年10月上旬

第10回:2023年2月上旬

のようなスケジュールになると予想されます。

 

またこの補助金

 

申請 ⇒ 採択 ⇒ 交付決定 ⇒ 事業実施 ⇒ 実績報告 ⇒ 補助金の交付(支払い)

 

という流れで手続きが進みます。

 

ここで気を付けておくべき点は「交付決定」の後でないと経費を発生させることができない、という点です。

補助金の手続き上は「交付決定後に事業が実施できる」と説明されています。

「事業の実施」=「経費の発生」=「発注や注文、契約行為の実施」と考えれば十分です。

補助金申請のスケジュールに加えて、経費の発生タイミングもしっかりと考えておきましょう。

第3回までの状況を振り返ると、申請締切から採択までは2~3か月かかっています。

また採択後、交付決定までに1か月以上かかるケースもあるようです。

 

第5回は6月4日締切ですので、交付決定は9月上旬~10月頃になる可能性があります。

少し先の話になりますが、補助金で申請する「販路開拓」の取組みは、秋以降のスケジュールが無難だと思います。

 

 

③申請手続き

小規模事業者持続化補助金は、申請する事業者の皆さんが、直接事務局に申請する必要があります。

申請の出し方は、「電子申請」と「郵送」の二つの方法があります。

 

○「電子申請」

「jGrants(Jグランツ)」という、国(経済産業省)が運営する補助金の電子申請システムを使って申請します。

 

https://jgrants.go.jp/

 

このシステムを使うためには「GビズIDプライム」というIDが必要です。

 

このID取得のためには、GビズIDポータル(https://gbiz-id.go.jp/top/index.html)上での手続きを経て、申請書と印鑑登録証明書を郵送するこが求められます。

 

手続きには2~3週間かかりますので、早めの手続きが安心です。

私が申請した時にはポストに書類を投函してから受付完了の連絡まで18日かかりました。

 

なお、GビズIDは「プライム」「エントリー」「メンバー」の3種類があります。

電子申請に必要なIDは「プライム」です。間違えないように申請しましょう。

 

今後、多くの補助金で「電子申請のみ受付」なる可能性もあります。

早めに電子申請の準備をしておきましょう。

 

 

○「郵送」

文字通り、必要書類を簡易書留などで郵送して提出することになります。

郵送の際は、簡易書留やレターパックなど、郵送の履歴を確認できる方法がお勧めです。

また、郵送提出時は、「締切日当日の消印有効」となります。

 

 

申請書の出し方は以上の通りです。

 

 

 

次は、提出すべき書類とその準備をどうすれば良いか、です。

 

最低限、提出すべき書類は次の通りです。

・様式1―1(共同申請の場合は様式1-2)

・様式2―1(共同申請の場合は様式2-2)

・様式3―1(共同申請の場合は様式3-2)

・様式4

・様式5

・(法人の場合)貸借対照表損益計算書

・(個人事業主の場合)確定申告書と青色申告決算書(または収支内訳書)

 

 

このうち「様式4(事業支援計画書)」は、商工会議所(または商工会)が発行するものです。

 

様式4を発行してもらうためには、そのほかの提出書類一式を準備して、商工会議所(
または商工会)にご相談ください。

それぞれの商工会議所(または商工会)で、発行に必要な手続きが異なりますのでご注意ください。

また様式4の発行には時間がかかります。

発行の申込期限を設けているところもあるようですので、早めに相談することをお勧めします。

 

そのほかの様式は、上で紹介した事務局のホームページから申請書フォーマット(Word、Excel形式)をダウンロードし、ご自身で作成を進めます。

 

まれに、パソコンが使えない、手書きで申請したい、という方がいらっしゃいます。

「手書きはダメ」というルールはありませんが、「郵送」で書類提出する場合には紙の申請書以外にデータの提出も求められます。

データはCD-RやUSBメモリに格納して、そのメディアを紙書類と一緒に郵送します。

この作業が必要なため、申請書の作成は基本的にパソコンで作成するようにしてください。

 

 

なお、皆さんと補助金事務局、商工会議所など、全体の関係性は次の通りとなります。

 

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補助金手続きのスキーム

 

 

④申請書作成のポイント

 

それでは最後に、申請書作成のポイントをご紹介します。

補助金の審査は「加点方式」で、最終的には点数で評価される仕組み(のはず)です。

応募締切ごとに予算が設定されており、点数の高いものから順番に予算が無くなるまで採択される、という流れだと思います。

申請書作成時に、採択率(申請者のうち補助金をもらえる割合=採択される割合)を気にする方もいらっしゃいますが、申請時点で採択率を考えても、「意味がない」としか言えません。

あくまでも採択率は「結果」でしかありませんので。

それを考える時間で、「いかに点数をもらえる申請書」を書くかに注力するほうが建設的です。

 

点数をもらうためには、審査の基準に沿った内容をしっかり盛り込むことが重要です。

小規模事業者持続化補助金では、「審査の観点」として「基礎審査」と「加点審査」の観点が示されています。

このうち「基礎審査」は、形式的な要件を満たしていることの確認になります。

「加点審査」が具体的に点数が積み上げられるポイントです。

それぞれ、公募要領には次の通り示されています。「加点審査」の内容をしっかり確認し、申請書の作成に取り掛かりましょう。

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基礎審査

 

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加点審査

 

なお、加点審査には「従業員の賃金を増加させる事業者」や「経営力向上計画の認定を受けている事業者」など、申請書の内容以外にも加点ポイントがあります。

これらの加点ポイントも無視はできません。

競争相手がこれらの加点を付けて申請してくると、相対的にマイナス評価になります。

少し手間がかかりますが、適用可能な加点措置はしっかり押さえておきましょう。

 

具体的な申請書の書き方・含めるべき内容などは、別の記事で書いていこうとおもいます。

 

 

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。