中小企業診断士の役に立つ(かもしれない)お話し

政令指定都市の商工会議所で経営指導員を務める中小企業診断士×ITコーディネーターが、中小企業支援施策や経営に役立つテーマについてお話します

事業再構築補助金の申請を考えている人に知っておいてほしい事

初めての記事はどんなことを書こうかと悩みましたが、やはりこのタイミングでは、事業再構築補助金の話が最も旬なお話だと思い、これをテーマに選びました。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html

 

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事業再構築補助金リーフレット

2020年の新型コロナウイルス蔓延を機に対策補助金助成金が、国・都道府県・市町村で多く実施されています。

 

事業再構築補助金は国の補助金で、令和2年度第3次補正予算で予算が組まれました。

その金額は1兆1485億円!

 

募集開始は3月を予定しているようですが、事業者の皆さんは待ち遠しいと思います。

皆さんの支援をする立場からは、募集開始前に少しでも早く詳細情報を出してほしいところです。

 

ここからは中小企業庁が2月15日に公表した事業再構築補助金の概要資料を基に、この補助金の申請を検討している皆さんにあらかじめ知っておいてほしいことを説明していきます。

https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0216

 

 

内容は大きく3つ。

1.補助金の目的

2.申請要件

3.補助金申請書の作成準備

 

1.補助金の目的

補助金はまず、補助金の目的の確認が大切です。

補助金の趣旨に沿ったものでなければ、審査で評価を得られない=採択されない=補助金をもらえない、ということになります。

 

事業再構築補助金の目的を見てみると

「ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、

 中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、

 日本経済の構造転換を促すことを目的とします。」

とあります。

 

これを分解すると次のとおり解釈できます。

 

・ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応

 これは従来の事業モデルを変えて、「コロナに対応した」、つまり、非接触や非対面など感染症対策を備えた事業が求められると考えられます。

 

・思い切った事業再構築を支援する

 これはさらに、「思い切った」と「事業再構築」の2つの要素に分解できます。

 「思い切った」は、この補助金補助金額を見ると分かる通り、大胆な投資が必要であることを示していると思います。

 「事業再構築」はこの後で説明する「申請要件」にあるとおり、業態転換や事業・業種転換を指します。

 

・日本経済の構造転換を促す

 最後のこの一文の対象は「日本経済」です。

 補助金を申請する企業も日本経済の一部ですのであまり気にする必要はないかもしれませんが、自社の売上・利益だけでなく、事業に関係するステークホルダー(取引先や企業、従業員など)に与える影響も考慮する必要があるかもしれません。

 

 

2.申請要件

次に「申請要件」を見てみると、次の3つが主要申請要件として記されています。

①売上が減っている

②事業再構築に取り組む

③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

 

①の売上減少については、

申請前の3か月とコロナ以前の売上比較で、売上が10%以上減少していることが要件になっています。

これは一部の事業者を除くと、ほとんどの方が該当するのではないでしょうか。

 

③の事業再構築に取り組むは、

 「新分野展開、業態転換、事業・業種転換」とありますが、その条件として

 「事業再構築指針に沿った」と記されています。

 この「指針」がどのようなものになるかわかりませんが、重要な要素になると思います。

 この指針に沿わないと「要件を満たさない」ということで、そもそも審査のテーブルに乗れない可能性もあります。

 今後、募集開始までに発表される予定ですので、注意深く見守りたいと思います。

 皆さんも事業計画を立てる傍らで、しっかりと確認するようにお勧めします。

 

③の支援機関と事業計画を策定するは、

事業計画を支援機関一緒に策定した証拠として、支援機関が発行する「確認書」を申請書類として求められることになるようです。

また、補助金額(補助対象経費ではなく補助金額です)が3000万円を超える場合は、金融機関も事業計画策定に加わる必要があります。

これは補助事業(補助金で申請する事業再構築の取組み)の資金計画を担保するためのものでしょう。

この要件に該当しそうな場合は、お付き合いのある金融機関に(借入の相談を含めて)早めに相談することをお勧めします。

また、確認書の発行についても支援機関に早めの相談をお勧めしたいところですが、本日(3月5日)時点で支援機関側も詳細情報を持っていないため、まだ何もご案内できないと思います。

 

 

3.補助金申請書の作成準備

最後に、今できる補助金申請の準備についてです。

準備は大きく二つ。

①GビズIDの取得(事務手続きの準備)

②申請書内容の下準備

 

①GビズIDの取得

この補助金の申請は、「電子申請」になる予定です。

電子申請は「GビズID」を使って指定の申請ポータルにログインするところから始まります。

「GビズID」は行政手続きをオンラインで進めるために必要なもので、法人・個人事業主にかかわらず取得できます。

取得のためにはGビズIDポータル(https://gbiz-id.go.jp/top/index.html)上での手続きを経て、申請書と印鑑登録証明書を郵送するこが求められます。

手続きには2~3週間かかりますので、早めの手続きをお勧めします。

なお、GビズIDは「プライム」「エントリー」「メンバー」の3種類があります。

電子申請に必要なIDは「プライム」です。間違えないように申請しましょう。

 

②申請書内容の下準備

上で説明した概要資料のP7に、「事業計画に含めるべきポイントの例」が記されています。

列挙すると次の通りです。

  • 現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
  • 事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
  • 事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
  • 実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
    この内容を見る限り、申請書はかなり精緻なものが求められると思います。

例えば、「事業再構築の必要性」は、内部環境(強みと弱み)分析と外部環境(機会と脅威)分析、それを基にした事業環境分析を踏まえて記載する必要があると思います。

この分析の程度と、全体の整合性が取れていなければ、高い評価は望めないと思います。

単純な比較はできませんし、補助上限額だけで評価はできませんが、難しいといわれる「ものづくり補助金」よりも補助上限金額が大きい補助金ですので、より精緻で、より説得力のある申請書が必要だと思います。

 

既に事業計画を持っている皆さんはそのブラッシュアップと、不足する部分の検討を進めておけばよいと思います。

何も作ってなくてゼロからのスタートの場合は、まずは「現在の企業の事業」から始めてはいかがでしょうか。これは自社の事業の内容や概要を、見ず知らずの第三者に説明する資料だと思って作ってみてください。

それを踏まえて、強み・弱み・機会・脅威の分析(いわゆるSWOT分析ですね)に入るのがスムーズだと思います。

もし一人(もしくは社内のメンバー)だけでは難しいという場合は、お付き合いのある金融機関や支援機関に相談してはどうでしょうか。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。